【コラム】なんで、配偶者控除廃止しようとするの?【NO.01】

高額所得者に限定した配偶者控除の検討が始まる。


11月2日、「高額所得者の配偶者控除は議論の俎上に載っている」という細川律夫厚生労働相の会見のニュースがいろいろな方面で報道されました。
このニュースは「貧乏でも安心。女性でも安心。」を実現するために大きな意味を持っています。

配偶者控除は高所得層だけ廃止 検討開始と厚労相
 細川律夫厚生労働相は2日の記者会見で、子ども手当上積みの財源について「高額所得者の配偶者控除は議論の俎上に載っている」と述べ、高所得世帯に限定した配偶者控除の廃止の検討を始めたことを明らかにした。
 民主党衆院選マニフェスト政権公約)では、子ども手当の財源を捻出するため配偶者控除の廃止を検討対象とすることが盛り込まれている。一方、内閣府は9月、子ども手当が現行の月額1万3千円のまま配偶者控除が廃止されれば、専業主婦世帯の半数以上で負担増になるとの試算を公表した。
 こうした世帯からの反発が予想されることから、玄葉光一郎国家戦略担当相が「これまでは廃止を前提にしていたが、果たして廃止でいいのか」と発言するなど、政府内でも意見が分かれている。このため、廃止を高所得層に限定する方向で検討を進めることになった。

配偶者控除と女性の貧困


配偶者控除とは所得38万以下で所得税を納める必要が無い人の配偶者も配偶者控除が受けられて所得税が安くなる制度です。
根底には夫は外で働き妻は夫に扶養され家事育児を担うという性的役割分担の考えがあり、この「男性片働き世帯」が世帯の標準モデルとして制度や施策をつくるときの指標になっています。
とりわけ年金制度はその典型です。




共働き世帯数の推移


しかし 今は共稼ぎ世帯のほうが多くた離婚も増え、シングルで生きる人も多く多様な家族形態が進んでおり男性片働き世帯は実態と乖離してきています。
この制度は 妻が働いていない世帯には無条件に適用されるが、妻も働いている世帯では妻の所得が一定以上(給与収入103万)になると適用されません。
「どのような働き方をすれば世帯の所得税が安くなり、可処分所得が増えるか」の損得勘定で妻は働くことになるケースが多く、そうなれば働き方は家計補助的な働き方になってしまいます。
生活を担う主体ではないし、夫に扶養されるパートだからと会社は賃金を安く押えようとし、一方、働く妻も「パートだから、扶養に入っておきたいから」の理由で賃金の安さを問題にしない。
女性が男性に扶養される前提のこの制度、壁のように重しのように女性に覆いかぶさり社会保険の加入条件の130万と相まって女性の就労の抑制と非正規雇用化・低賃金化をもたらしていると言えます。



男女間の賃金格差資料:内閣府「男女共同参画白書」(平成19年版)



男女の雇用統計


女性と貧困ネットワークの政策部会の講座でも「配偶者控除」の問題がとりあげられました。
男女の年齢層別貧困率を比較してみると女性の貧困率が高くそれも高齢女性の貧困率が高い。
世帯では、母子世帯の貧困率が際立って高く単身世帯でも女性のほうが男性よりも貧困率が高い。



男女別・年齢階層別相対的貧困率(平成19年)


女性の貧困化をもたらしているのは様々な要因がありますがその1つに配偶者控除の制度があり女性の貧困に深く関わっています。
配偶者控除に手をつける、つまり103万の配偶者控除 130万の社会保険加入条件の壁の撤廃もしくは壁を低くする。
このことは女性の社会進出の促進、低い賃金の是正をもらたすことができ貧困の解消の一歩になると思います。

配偶者控除廃止への反発


控除の所得階層別適用割合


現在、夫に扶養されて103万円内・130万円内で働いている家庭にとってこの廃止はとてもダメージの大きなものです。
特に夫の年収が400万円をこえたあたりから配偶者控除が適応されている家庭が多いことがわまります。
これは、中間層とよばれてきた年収300万円〜600万円当たりの人たちにとっては死活問題になることをあらわしているのです。
今回、所得1000万以上に限定し、こども手当てという甘い蜜をセットで報道したり、発表しているのはその反発を防ぐ意味合いがあるのではないでしょうか?

高額所得者に限定した配偶者控除の廃止に意味はあるの?


女性と貧困ネットワークで活動している大矢さよこさんに今回の報道にコメントをいただきました。

「何も手をつけないと思っていたのにやっと方向らしきものを出したことは良かったと思っております。
高額所得者に専業主婦比率が高いのでまずここから手をつけるのは風穴をあける意味でも、歓迎です。
第三次男女共同参画の策定や年金の在り方の議論の中で女性労働の社会進出や130万の壁の問題が議論になると少しずつ進んでいくのではないかと期待したいです。ともあれ 蚊帳の外にならなくて良かったです。」

配偶者控除の廃止、その先の課題


配偶者控除を廃止するだけでは、女性が社会進出した場合の低賃金に与える影響は限定されます。
パートや派遣、アルバイトといった労働と正社員労働の均等待遇への働きかけを行わないと、以前、女性は低い賃金で働くことを強いられることに変わりはないのです。
雇用形態が身分制度のように賃金を決めてしまう今の労働環境についてもっと声を上げていきたいと思います。
また、女性と貧困ネットワーク内で配偶者控除の問題を議論する中「人的控除の問題としてとらえなおさなくてもよいのか?」という意見などがでました。女性と貧困ネットワークでは今後もさまざまな方向から配偶者控除についての意見を出してゆきます。


(文責:大矢・ナガノ)


日本の税金 (岩波新書)

日本の税金 (岩波新書)

その他の報道


配偶者控除は高所得層だけ廃止 検討開始と厚労相
 細川律夫厚生労働相は2日の記者会見で、子ども手当上積みの財源について「高額所得者の配偶者控除は議論の俎上に載っている」と述べ、高所得世帯に限定した配偶者控除の廃止の検討を始めたことを明らかにした。
 民主党衆院選マニフェスト政権公約)では、子ども手当の財源を捻出するため配偶者控除の廃止を検討対象とすることが盛り込まれている。一方、内閣府は9月、子ども手当が現行の月額1万3千円のまま配偶者控除が廃止されれば、専業主婦世帯の半数以上で負担増になるとの試算を公表した。
 こうした世帯からの反発が予想されることから、玄葉光一郎国家戦略担当相が「これまでは廃止を前提にしていたが、果たして廃止でいいのか」と発言するなど、政府内でも意見が分かれている。このため、廃止を高所得層に限定する方向で検討を進めることになった。
http://www.chugoku-np.co.jp/NewsPack/CN2010110201000310_Politics.html



配偶者控除は高所得層だけ廃止 検討開始と厚労相

 細川律夫厚生労働相は2日の記者会見で、子ども手当上積みの財源について「高額所得者の配偶者控除は議論の俎上に載っている」と述べ、高所得世帯に限定した配偶者控除の廃止の検討を始めたことを明らかにした。

 民主党衆院選マニフェスト政権公約)では、子ども手当の財源を捻出するため配偶者控除の廃止を検討対象とすることが盛り込まれている。一方、内閣府は9月、子ども手当が現行の月額1万3千円のまま配偶者控除が廃止されれば、専業主婦世帯の半数以上で負担増になるとの試算を公表した。

 こうした世帯からの反発が予想されることから、玄葉光一郎国家戦略担当相が「これまでは廃止を前提にしていたが、果たして廃止でいいのか」と発言するなど、政府内でも意見が分かれている。このため、廃止を高所得層に限定する方向で検討を進めることになった。
http://www.47news.jp/CN/201011/CN2010110201000310.html

11年度税制改正:政府税調、ヒアリング終了 省庁間対立、鮮明に 業界も次々反発

 ◇あすから本格論議
 政府税制調査会は2日、11年度税制改正に向けた各省庁や業界団体からの要望のヒアリングを終えた。計3日間のヒアリングでは、法人税減税の財源確保策や環境税導入を巡り、各省庁間や業界団体との対立関係が鮮明になった。税調は4日から法人税など主要項目について検討を開始するが、12月中旬までの税制改正大綱の取りまとめに向けては、激しい議論が予想される。【久田宏】

 ◆法人税

 「各国とコストや開発力で競争するための原資として、法人税引き下げが必要だ」。2日のヒアリングで、日本経団連副会長の渡辺捷昭トヨタ自動車副会長は力説した。産業界の主張をバックアップする経済産業省法人税率を現行の30%から5%引き下げるよう求めている。

 しかし、最大の課題となるのが税収の減少分の財源をいかに確保するかだ。財務省は、減収は約2兆円と見積もり、それに見合う代替財源案として、租税特別措置(租特)で免税となっているナフサ(免税額3・7兆円)への一部課税などの増収策を提示。これに対し産業界は「ナフサに課税すれば、石油化学産業は日本に立地できず、70万人の雇用が失われる」(経団連の渡辺副会長)と強く反発している。

 一方、経産省は減税による税収減は約1兆円と試算。租特の廃止を一部にとどめる一方、減税による経済成長の底上げ効果を見込んで財源確保が可能としている。これに対しては財務省が「根拠があいまい」と批判するなど、両省は真っ向から対立している。

 ◆環境税

 経産・環境両省はそれぞれ要望案を提出しているが、化石燃料に幅広く課税する石油石炭税を実質的に増税する点で一致している。二酸化炭素(CO2)の排出量を抑制する一方で、税収を両省共管のエネルギー対策特別会計に繰り入れ、省エネ促進など地球温暖化対策のための財源として活用する狙いだ。

 これに対しても経団連は「安易な導入は反対」と、増税により企業活動が阻害されることを警戒。日本商工会議所の大和田達郎税制副委員長も「中小企業に新たな負担をもたらす」との懸念を示した。

 また、税収の使い道を巡ってはエネルギー特会への繰り入れに対し、財務省が反発。社会保障などに幅広く使える一般会計化を求めている。

 ◆所得税

 厚生労働省は、11年度からの子ども手当の支給額上積みの財源として、所得税配偶者控除の廃止を目指している。月1万3000円の子ども手当半額支給を実施した10年度は、15歳以下の所得税と住民税の扶養控除を廃止することで、計1・1兆円の財源を捻出(ねんしゅつ)している。

 ヒアリングでは、現行の配偶者控除制度は妻が一定以上の収入を得ると不利になるケースがあることから、「配偶者の社会進出を阻害している」(日本税理士会連合会)と、廃止を支持する意見が出た。一方で、子どもがいない夫婦の配偶者控除まで子ども手当のために廃止すれば、実質増税となり、政府・与党内には消極的意見も少なくない。

 ◆国際連帯税

 外務省は、環境や貧困など国境を超えた課題を解決するための資金調達を目的とする「国際開発連帯税」の創設を要望している。国内をたつ国際航空券に課税する仕組みで、フランスをはじめ世界各国で導入が広がっている。

 ただ、航空会社の競争が激化して経営状況が悪化する中、乗客の負担が増す同税には航空会社が反発。国土交通省も反対姿勢を強めている。このため、来年度からの導入は先送りされる公算が大きくなっている。2日のヒアリングでは外務省から国際連帯税について詳細案が示されず、税調メンバーから外務省の実現に向けた意欲が疑問視されている。
http://mainichi.jp/select/biz/news/20101103ddm008020008000c.html

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